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Channel: 二木紘三のうた物語
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のこり花火

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*パソコンでは自動的に演奏が始まります。スマートフォン等で演奏が始まらない場合は、プレイヤー左端の三角をタップしてください。(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo



作詞:西條八十、作曲:本居長世

1 浜の子供と うち上げる
  残り花火は さみしいな
  ことしの夏も これきりよ
  あしたは汽車で 帰るのよ

2 砂には黒い 海がらす
  よしずの茶屋の 秋の風
  雨の晴れまに うち上げる
  残り花火は さみしいな


《蛇足》 大正12年(1923)10月、本居長世(もとおり・ながよ)の曲付きで発表されました。楽しかった夏の終わりをしみじみと感じさせるノスタルジックな1曲です。

 この発表時期は、同年9月1日の関東大震災から1か月あまりあと。惨害にうちひしがれていた多くの人たちの心を癒したと伝えられています。

 静岡県沼津市の魚市場の近くに港口公園という公園があり、そこに本居長世の記念碑が建っています。記念碑には、このメロディの冒頭の楽譜が刻まれ、また、そのすぐ近くに、金田一春彦が本居長世について次のように書いた碑が建っています。

 本居長世は、童謡という日本の文化財を人に先駆けて製作した先覚者である。大正9年秋、彼が野口雨情の作詩した「十五夜お月さん」に付けた曲は子供たちの間に親しかったわらべ歌の音階・旋律をもとにして作ったもので、それまでの堅い文部省唱歌のみを歌っていた子供たちに本当の日本の子供の歌を教えた記念すべき作品であった。
 本居は沼津の地を愛し、毎夏家族と共に滞在して町の人と親しみ、作曲にいそしんだが、ここに掲げる西条八十作詞の「残り花火」は当時の夏の沼津の浜の風景を写して遺憾なく、本居の作曲はまた夏の沼津を慕い、懐かしむ子供の心情を表現しおおせて完璧の出来である。

Nokorihanabi


 なお、記念碑には『残り花火』とありますが、JASRACのデータベースには『のこり花火』が正題として登録されていますので、それに従いました

(本居長世記念碑についての資料と写真は中村喜一さんからご提供いただきました)。

(二木紘三)


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