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作詞:水島 哲、作曲:平尾昌晃、唄:布施 明
1 貴女(あなた)と歩いた あの道に 2 貴女のやさしい ほほえみも |
《蛇足》 昭和41年(1966)3月1日、徳間ジャパンより発売。
B面は『悲しき旅路』。
布施明は、声よし、唄よし(正統的歌唱)、顔よしと3拍子そろっており、とくに女性に人気がありました。
『霧の摩周湖』と『シクラメンのかほり』が代表作ということになりましょうか。
この歌には夜霧、霧が出てきますが、これはアカシア、白樺、リンドウ、鈴蘭、雨、湖などと並んで、昭和歌謡の必須のアイテムですね。とくに夜霧や霧が歌詞に入っていると、俄然ロンチックになります。
そこでタイトルや歌詞に夜霧、霧が入っている曲を、私のサイトから拾い出してみました(順不同)。
緑の地平線(霧の都の夜は更けて)
夜霧のブルース(青い夜霧に灯影が赤い)
港が見える丘(霧の夜でした)
哀愁の街に霧が降る(泪色した霧がきょうも降る)
夜霧の第二国道(浮かぶ夜霧のああ第二国道)
泣かないで(霧が流れるビルの影)
東京の灯よいつまでも(雨の外苑夜霧の日比谷)
俺は待ってるぜ(霧が流れてむせぶよな波止場)
霧笛が俺を呼んでいる(霧の波止場に帰って来たが)
長崎の人(君と別れた霧の夜)
赤坂の夜は更けて(夜霧が流れる一つ木あたり)
霧の中の少女(あわれ少女よ霧の中の少女)
夜霧よ今夜も有難う(しのび会う恋をつつむ夜霧よ)
ざっと見た限りでは、夜霧や霧がよく出てくるのは、昭和20年代、30年代に発表された曲がほとんど。
どういうわけか、戦前の曲や、戦後でも昭和40年代後半以降に作られた曲には、夜霧、霧はほとんど使われていないようです。
また、どの時代でも、抒情歌とされるジャンルの歌には、夜霧、霧を使った歌詞はほとんど見つかりません。NHKのラジオ歌謡で、あまりヒットしなかった曲には、夜霧、霧を使ったものがあるかもしれません。
私が子ども時代(昭和20年代)を過ごした信州の田舎では、秋になると、朝霧がよく出ました。
東京に来てから、霧を"経験"したのは1度だけ。昭和39年の秋、旧中野刑務所の横を彼女と歩いているとき、急に濃い霧が湧き出し、刑務所の壁も見えなくなって、ロマンチックな雰囲気になりました。後年、彼女にその話をしたところ、彼女は全然覚えていませんでした。
まあ、記憶しておくほどのことでもありませんが……。
(二木紘三)