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作詞:西沢 爽、作曲:遠藤 実、唄:梶 光夫
1 流れる雲よ 城山に 2 白壁坂道 武家屋敷 3 どこへも誰にも 嫁(い)かないと |
《蛇足》 昭和39年(1964)にコロムビアレコードから発売。
梶光夫は遠藤実の門下生で、昭和38年(1963)にデビュー、3作めの『青春の城下町』が大ヒットとなりました。
曲には、遠藤実独特の温かさがあるうえに、メロディだけ聞くと、一瞬童謡かなと思うほど素直なコード進行で、歌が苦手な人でも、無理なく歌えます。これが大ヒットの一因でしょう。
また、歌詞には、城山、城下町、白壁、武家屋敷といった、郷愁を誘うアイテムが組み込まれており、これが地方出身者にアピールしたと思われます。
冒頭に城山という言葉が出てきますが、どの城下町にも城山があるわけではありません。
ウィキペディアによると、城山という名の山は全国に276山ありますが、その多くが中世の山城や砦に由来し、その地形ゆえに城下町はほとんど形成されませんでした。
城下町が形成されるには、平城であることが必要なようです。
城下町を見下ろせる城山は非常に少なく、鹿児島市の城山(しろやま)、松本市の城山(じょうやま)ぐらいしか、私は思いつきません。城下町の近くにある城山をご存知の方は、お知らせください。
ただし、城山が近くにあっても、城下町に城(復元も含めて)か城跡がなければ、城下町というイメージは薄くなります。
城下町は見下ろせても、「君の家の窓灯り」が見えるほど近くにある城山は、ほとんどないはず。少年は、城山の裾野の市街地に近い高みから眺めたのでしょうか。
付き合っていなくても、好きな女の子の家の前を通るだけでときめいた経験のある人は、少なくないでしょう。まして、付き合っている女の子なら、その住む家は、彼にとっては「夢の家」になります。
これは少年のセンチメントですが、少女も同様なのでしょうか。残念ながら、メッチェンの心情がわかるほどの経験は積んでこなかったので、なんともいえません。
2番の矢羽根は、矢羽根模様の絣(かすり)、すなわち矢絣(やがすり)の着物を示しています。
学校の式日に和服で行く女子が増えたのは、割と最近の風俗で、昭和40年前後には、セーラー服などの制服で行くのが一般的だったと思います。
ですから、2人は、学校の式日ではなく、お祭りや花火大会などのイベントに行ったのだろうと思われます。彼女の着物姿を初めて見て、彼は舞い上がったことでしょう。
ヘルマン・ヘッセ『青春はうるわし』の世界ですね。もう一度その世界に戻れたら、などと思いながら、身辺の始末を進めています。
(二木紘三)