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Channel: 二木紘三のうた物語
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帰らざる河

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(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:Ken Darby、作曲:Lionel Newman、
日本語詞:穂高五郎、唄:Ernie Fords/Marilyn Monroe

ああ 帰らざる河
悲しみ込めて
静かに流れゆくよ
果てなき荒野を はるばると
音もなく 流れゆく

ウェラリー もう帰らない
(ノー・リターン ノー・リターン)
遠い日の夢 ウェラリー
岸辺に ひとり立てば
(ノー・リターン ノー・リターン)
かすかに聞こえる いとしい人の声
波の間(ま)に 微笑んで消える
遠く帰らない 河の流れよ
(ノー・リターン ノー・リターン
ノー・リターン ノー・リターン)


           River of No Return

There is a river called the "River of No Return"
Sometimes it's peaceful and sometimes wild and free!
Love is a trav'ler on the "River of No Return"
Swept on forever to be lost in the stormy sea

Wail-a-ree
I can hear the river call (no return, no return)
Where the roarin' waters fall wail-a-ree
I can hear my lover call "Come to me" (no return, no return)
I lost my love on the river and forever my heart will yearn
Gone, gone forever down the "River of No Return"
Wail-a-ree wail-a-ree
She'll never return to me!
(no return, no return, no return, no return)

《蛇足》二十世紀フォックスの西部劇『帰らざる河(River of No Return)』の主題歌。主演はロバート・ミッチャムとマリリン・モンローで、日本での公開は昭和29年(1954)8月13日。

 ウェスタン歌手テネシー・アーニー・フォードの渋い歌声がタイトルバックに流れましたが、多くの人の記憶に刻まれたのは、モンローが劇中で歌ったほうでした。現在でも、『帰らざる河』はマリリン・モンローの持ち歌、ということになっています。

 モンロー版では、最初に"If you listen you can hear it call/Wail-a-ree wail-a-ree"が入り、最後のヴァースが"She'll...."ではなく、"He'll..."となっています。

 1954年1月14日、モンローはヤンキースの4番打者、ジョー・ディマジオと結婚、2月1日に新婚旅行で来日しました。
 ディマジオは、ベーブ・ルース引退後、続いてルー・ゲーリック引退後のヤンキースを支え続けた大打者で、その背番号5は永久欠番になっています。
 ところが、日本での記者会見では、質問はモンローにばかり集中し、ディマジオにはおざなりの質問が1、2度向けられただけでした。球界のスーパースターは、誇りをいたく傷つけられたようです。

 帰国後も、自由奔放で映画の仕事に忙しいモンローと、誠実で彼女を独占したいディマジオとの間に摩擦は絶えませんでした。そして、その年の10月、ついに離婚。わずか274日間の結婚生活でした。
 離婚後もディマジオは、マスコミの攻撃などで孤独感に悩まされたモンローを支え続けたといいます。

 モンローは、マフィアと関係が深かったとされるフランク・シナトラの紹介で、J. F. ケネディ大統領と知り合い、まもなく不倫関係に陥ります。また、彼の弟、ロバート・ケネディ司法長官とも肉体関係があったといわれます。

 そして、1962年8月5日の衝撃的な死。自殺ともいわれていますが、その死は謎に包まれています。
 当時、ケネディ兄弟は、
マフィア撲滅に立ち上がろうとしていました。モンローとの関係をマフィアに暴露されると、その政策が烏有(うゆう)に帰しかねません。それを恐れたケネディ兄弟の意を受けた何者かによってモンローは殺された、という噂が公然と囁かれました。
 ディマジオはこの噂を信じ、ケネディ一族を終生憎み続けたといいます。

 ディマジオが離婚後もモンローを愛し続けたのはまちがいないようです。葬儀で、彼は棺の前で涙を流しながら「愛している」と呼びかけ続け、ある女性誌から巨額の報酬を提示されても、モンローとの愛について語ることを拒否したと伝えられます。また、その後だれとも再婚せず、独身を通しました。

 ところで、美空ひばり『川の流れのように』のように、川はよく人生に喩えられます。
 山地の水源を出た頼りなげな細流は、あちこちからしみ出す水を合わせて、やがて急流、激流となり、平地に流れ出ると、いくつもの支流を合わせて力強く、堂々とした流れに変わります。そして、河口が近づくにつれて、川幅が広がり、ゆったりと流れるようになります。

 急流、激流が川の中の岩にぶつかり、両岸を削りながら流れるように、人を傷つけ、自分も傷つきながら、自己のアイデンティティを探し求めた青春の日々。河口が近づくと、そんな惑いと彷徨の時代がひたすら懐かしくなります。しかし、そこに戻るすべはなく、やがて忘却の大海へと流れ込みます。
 「帰らざる河」でなく、「帰られざる河」なのです、だれの人生も。

(二木紘三)


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