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Channel: 二木紘三のうた物語
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悲しい酒

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(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:石本美由起、作曲:古賀政男、唄:美空ひばり

1 ひとり酒場で 飲む酒は
  別れ涙の 味がする
  飲んで棄てたい 面影が
  飲めばグラスに また浮かぶ

    (セリフ)
    「ああ 別れた あとの心残りよ
    未練なのね あの人の面影
    淋しさを忘れるために
    飲んでいるのに
    酒は今夜も私を悲しくさせる
    酒よどうして どうしてあの人を
    あきらめたらいいの
    あきらめたらいいの」

2 酒よ心が あるならば
  胸の悩みを 消してくれ
  酔えば悲しく なる酒を
  飲んで泣くのも 恋のため

3 ひとりぼっちが 好きだよと
  言った心の 裏で泣く
  好きで添えない 人の世を
  泣いて怨んで 夜が更ける

《蛇足》昭和41年(1966)6月10日に発売。

 別の歌手のために作られた曲でしたが、さっぱり売れず、その後何人かの歌手がカバーしたものの、ヒットすることなく終わりました。
 美空ひばりは、カバー曲だと知らされずに歌ったそうですが、発売後すぐ売れ出し、145万枚を売り上げる大ヒットとなりました。『柔』『川の流れのように』と並ぶ、美空ひばりの代表曲です。

 昭和41年の発売時には、セリフはありませんでしたが、昭和42年(1967)3月、コンパクト盤『美空ひばりの悲しい酒』に収録された際に、セリフが入れられました。だれのアイデアだったのでしょうか。

 古賀政男作曲の失恋歌であることから、『影を慕いて』の戦後版といわれましたが、私には、同じ古賀政男の『酒は涙か溜息か』の戦後版のように思われます。『影を慕いて』には、酒は出てきませんしね。

 近年は、若い女性が、グループではもちろん、ひとりで酒場に行くのも普通になったそうですが、昭和40年代には、ひとりで行く女性はまだ少なかったのではないでしょうか。
 このころ、私は盛んに飲んでいたので、ひとりで飲んでいる若い女性を見ると、(何かよほど辛いことがあったんだろうなあ)と想像を巡らしたものでした。

 酒と縁が切れてから、20年ほどになります。父は酒が一滴も飲めませんでした。その体質を受け継いで、私も弱いくせにやたら飲んでいたので、ほぼアル中といった状態になってしまいました。仕事にも差し障りが出るようになったので、これはヤバイと思って止めたのです。何度も元に戻ってしまい、自己嫌悪に陥りました。

 酒でさえ、止めるのにあんなに辛い思いをするのに、薬物だったら、どんなに大変だろうと思います。K君、がんばってね。

(二木紘三)


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