(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
日本語詞:堀内敬三
愛する思いは 朝夕たえず Ich Liebe Dich Ich liebe dich, so wie du mich, |
《蛇足》 K. F. W.ヘルロッセーの詩"Zärtliche Liebe(優しき愛)" に曲をつけたもの。ヘルロッセーの詩は2節ありましたが、ベートーベンは最初の節だけに作曲しました。求愛の歌です。
わが国では、原詩のタイトルより、"Ich liebe dich" のほうがよく知られています。
作曲は1795年、ベートーベン25歳のときだったとされていますが、1797年説、1803年説もあります。楽譜は1803年に、ウィーンで出版されました。
1795年は、ベートーベンの運命が大きく動き出した年でした。その2年前に、ボンからウィーンに移住し、貴族のサロンにおける即興演奏で評判になっていたベートーベンは、1795年5月、満を持して初めての公演を行いました。このとき演奏した自作のピアノ・コンチェルトによって、作曲家・演奏家としての評価が確立されたのです。
つまり、この小品は、ベートーベンが波に乗り始めた時期の作品ということになります。
この曲は、テンポによって印象がかなり違ってきます。発表時のテンポがどうだったかはわかりませんが、速いテンポで演奏・歌唱すると、軽快で素朴な民謡調の曲になり、遅いテンポだと、優雅かつ典麗なイメージになります。
速めのテンポで演奏・歌唱するのが一般的なようですが、ここでは、堀内敬三の荘重な日本語詞に合うように遅めにしました。
曲の邦題から、大久保武道・愛新覚羅慧生(あいしんかくら・えいせい)の往復書簡集『われ御身を愛す』(鏡浦書房)を思い出しました。第二の"天国に結ぶ恋"といわれた「天城山心中」(昭和33年〈1958〉)の2人で、痛ましい事件でした。これに触れると、ベートーベンの曲より、こっち関係の投稿が多くなりそうだと思いつつ、つい書いてしまいました。
(二木紘三)