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1 夕焼け雲に 誘われて |
《蛇足》昭和51年(1976)3月20日、ミノルフォンから発売。
敗戦後から高度成長期にかけて、多くの若者が地方から東京などの大都会に出てきました。その多くが、懐郷の思いに胸を熱くし、心を寄せていた故郷の女性に思いをはせました。
この歌や、『別れの一本杉』『丘にのぼりて』『帰ろかな』なども、そうしたセンチメントをテーマとしています。
夕焼けはきれいですが、夕暮れは赤ん坊と老人を不安にさせます。
赤ん坊のなかには、生後3か月あたりから、毎日、夕暮れ時になると、泣き出す子がいます。どこかが痛いとかおなかがすいたなど、はっきりした理由がないのに、ほぼ決まった時間に泣き出すのです。うちの長女がそうでした。
これを「黄昏泣き(コリック)」というそうです。
黄昏泣きの理由はよくわかっていませんが、私は、すぐに来る夜という未知の時間への不安からではないかと思います。
老人も、人生の黄昏時にはよく泣きます。赤ちゃんは声を出して泣きますが、老人は心の中で息を潜めて泣きます。泣いているつもりはなくても、よくわからないモヤモヤを感じているときとか、わけもなく寂しいときは、実は黄昏泣きしているのです。
これも、来たるべき"長い夜"への不安がそうさせるのでしょう。
赤ちゃんの場合は、10時間ほどで朝が来て、それを繰り返すうちに夜に慣れます。いっぽう、老人に遅かれ早かれ訪れる"夜"は、明けるのか明けないのか全然わからず、それゆえ、それに慣れる機会がありません。死んだ人に訊くわけにもいきませんしね。
ま、夕焼けを見ても、不安を感じることなく、ただ美しいと感じていた遠い青春時代を思い起こして、心を慰めましょう。
(二木紘三)