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作詞:Romain Bussine、作曲:Gabriel Fauré、日本語詞:門馬直衛
君の姿が魅了するまどろみの中 君はぼくを呼び、そしてぼくはこの地上を離れて ああ!ああ!悲しい夢からの目覚め Après Un Rêve Dans un sommeil que charmait ton image Tu m'appelais et je quittais la terre Hélas! Hélas! triste réveil des songes, |
《蛇足》 フランスの作曲家、ガブリエル・ユルバン・フォーレ(Gabriel Urbain Fauré 1845-1924)の名作の1つ。
フォーレは『レクイエム』や歌劇『ペネロープ』『プロメテ』などの大作も作っていますが、その本領は室内楽などの小規模作品にあったようです。
この曲は1870年から同77年にかけて作られた『3つの歌(Trois mélodies)』という歌曲集の最初の曲です。楽譜の発売は1878年。エレジーに近いメランコリックな曲調で、歌詞とよく合っています。
声楽としてはもちろん、器楽としても演奏されますが、器楽では、パブロ・カザルスが編曲したチェロとピアノのバージョンがとくに有名です。
フォーレは、人妻を含む多くの女性と関係したことで有名。ピカソも女性関係が派手だったそうですが、性欲は創作力の源泉なのかもしれません。もっとも、性的に放縦な人間がクリエイティブとはかぎらず、実際には犯罪者すれすれという人間が多いようです。
歌詞は、イタリアのトスカーナ地方に伝わる古い民謡を、フランスの詩人、ロマン・ビュッシーヌ(Romain Bussine 1830- 1899)がフランス語に翻訳してリファインしたもの。
恋人と過ごしていた楽しい夢が覚めてしまったときの味気なさを歌っています。
恋人の夢では、実際には、この歌のような楽しい夢より、悲しい夢、辛い夢を見る人のほうが多いのではないでしょうか。それは、順調な恋の楽しさより、失恋の苦しさ、悲しさのほうが、傷として心に深く刻み込まれるからです。
たとえば『酒は涙か溜息か』の
2 遠いえにしのかの人に
夜毎の夢の切なさよ
4 忘れた筈のかの人に
のこる心をなんとしょう
のほうが心に沁みる人が多いと思います。日本人だけのことかもしれませんが。
(二木紘三)