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1 村の鎮守(ちんじゅ)の神様の |
《蛇足》明治45年(1912)に発行された3年生用の音楽教科書『尋常小学唱歌』に収録されたのが初出。以後、平成22年(2010)まで一貫して小学校3年生用の音楽教材として扱われてきました。
ただし、敗戦後の昭和22年(1947)版では、3番の前半「治まる御代に神様の/めぐみ仰ぐや村祭」が、「みのりの秋に神様の/めぐみたたえる村まつり」に変えられました。
これは、「治まる御代に」が天皇統治を、「神様の/めぐみ仰ぐや」が神道を思わせるというのが理由だったようです。
昭和26年(1951)に小学校3年だった私は、この変更版で歌っていたと思います。
3番の歌詞については記憶が定かではありませんが、音楽の時間にはまちがいなく歌っていました。タイトルの上にあった横長の挿絵まで鮮明に覚えています。左端に石段があり、そこを登ると幟が並んでいて、右端に本殿があるといった構図でした。
歌詞もメロディも、待ちかねたお祭りに心躍らせる子どもの気持ちをみごとに表しています。
私が子ども時代を過ごした集落では、春には神社、夏には寺院の祭礼があり、そのほか、夏休みに小学校の男児だけで行う道祖神のお祭がありました。
神社と寺院の祭礼では、多数の露店が並びました。友達と露店を見て回り、親からもらったわずかな小遣いでモノを買うことのなんと楽しかったことか。
よく買ったモノ……かみかんピストル、かんしゃく玉、プリズム、水風船ヨーヨー、メンコ、綿あめ、ニッキアメ、ゼンマイ自動車など。
かみかんピストルは、直径1.5センチぐらいのロール式火薬が入っていて、引き金を引くとパンと音がするものです。弾は出ません。追加で火薬ロールを買うこともできましたが、たいていは撃ち終えるとご用済みになりました。
露店がともすカーバイド・ランプ(アセチレン・ランプ)の独特の匂い。行き交う人びとのさんざめき。忘れられません。
それから映画。神社でも寺院でも、宵祭の夜には露天にスクリーンを張って映画が上映されました。人びとは持参したゴザなどに座って観覧しました。上映されたのは、東映の時代劇が多かったような気がします。
翌日の本祭の寂しさ。ほとんどの露店が引き払っており、詣でる人もまばらで、ウロウロしているのは、前日の楽しさが忘れられない子どもたちばかり。夏休みが終わって、明日からは学校という日の白茶けた気持ちと同じですね。
昭和の大合併、平成の大合併を経て、村は激減しました。平成26年(2014)4月5日の時点で、市が790、特別区が23、町が745に対して、村はたったの183。栃木県など13県には、村は1つもありません。
しかし、村祭まで激減したわけではありません。村祭という呼び名には合わないかもしれませんが、今も、合併される前の神社・寺院のエリア単位で祭礼を行っているところが多いようです。
ただ、ゲームなど多様な娯楽が増えた現在、子どもたちは、かつての子どもたちのようにはお祭に心を沸き立たせなくなっているかもしれません。
(二木紘三)