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Channel: 二木紘三のうた物語
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花はどこへ行った

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(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞・作曲:Pete Seeger、補作詞:Joe Hickerson、
日本語詞:おおたたかし、唄:キングストン・トリオ他

1 野に咲く花は どこへ行く
  野に咲く花は 清らか
  野に咲く花は 少女(おとめ)の胸に
  そっとやさしく 抱(いだ)かれる

2 かわいい少女は どこへ行く
  かわいい少女は ほほえむ
  かわいい少女は 若者の胸に
  恋の心 あずけるのさ  

3 その若者は どこへ行く
  その若者は 勇んで
  その若者は 戦いに行く
  力強く 別れを告げ

4 戦い終わり どこへ行く
  戦い終わり 静かに
  戦い終わり 土に眠る
  やすらかなる 眠りにつく

5 戦士の眠る その土に
  野ばらがそっと 咲いてた
  野ばらはいつか 少女の胸に
  そっと優しく 抱かれる

Where Have All the Flowers Gone

1. Where have all the flowers gone?
   Long time passing
   Where have all the flowers gone?
   Long time ago
   Where have all the flowers gone?
   Girls have picked them every one
   When will they ever learn?
   When will they ever learn?

2. Where have all the young girls gone?
   Long time passing
   Where have all the young girls gone?
   Long time ago
   Where have all the young girls gone?
   Taken husbands every one
   When will they ever learn?
   When will they ever learn?

3. Where have all the young men gone?
   Long time passing
   Where have all the young men gone?
   Long time ago
   Where have all the young men gone?
   Gone for soldiers every one
   When will they ever learn?
   When will they ever learn?

4. Where have all the soldiers gone?
   Long time passing
   Where have all the soldiers gone?
   Long time ago
   Where have all the soldiers gone?
   Gone to graveyards every one
   When will they ever learn? 
  When will they ever learn?

5. Where have all the graveyards gone?
   Long time passing
   Where have all the graveyards gone?
   Long time ago
   Where have all the graveyards gone?
   Covered with flowers every one
   When will we ever learn?
   When will we ever learn?

《蛇足》アメリカのプロテスト・ソングないしメッセージ・フォークの旗手だったピート・シーガー(Pete Seeger、1919年5月3日~2014年1月27日)が、1955年に発表した反戦歌。

 このときは3番まででしたが、最初の録音を聴いて感動したフォーク・シンガーのジョー・ヒッカーソン(Joe Hickerson、1935年10月20日~)が2聯付け加え、5番までとしました。これにより、戦争批判の色彩が一段と濃くなりました。

 このころ、インドシナ半島東部、いわゆる仏印を植民地としていたフランスが、ソ連・中国の支援を受けたヴェトミン(ヴェトナム独立同盟)との戦いに敗れて撤退していました(『兵隊が戦争に行くとき』参照)

 ヴェトナムは南北に分断され、北ヴェトナムはヴェトナム民主共和国として独立します。共産主義の浸透を恐れたアメリカは、南ヴェトナムに傀儡政権を作り、北ヴェトナムおよび南ヴェトナム解放民族戦線(通称ヴェトコン)との戦いに介入します。凄惨な戦いが続いた末、1975年4月30日に北側の全面的勝利で終わりました。

 『花はどこへ行った』は、フランスとアメリカによる「インドシナ戦争」を隠喩的に批判したものですが、底流しているのは、いつまでたっても戦争をやめられない人類への嘆きといっていいでしょう。

 少女たちは花を摘み、結婚し、その夫たちを含めて若い男たちは戦争に行って死に、彼らを葬った墓は草花に覆われてわからなくなり、その花を少女たちが摘み、結婚し、夫たちは戦場へ……と螺旋状に無限に続く人類の営み。

 各聯の末尾で繰り返される When will they ever learn?(いつになったら彼らは学ぶのだろうか)は、こうした愚かさをストレートに嘆いたフレーズです。theyはいうまでもなくweです。我々はいったい、いつになったら学ぶのでしょうか。
 人類が同類殺しを始めてから何万年経つかわかりませんが、今日まで戦争が絶えた時代のないことを考えると、もしかしたら答えはないかもしれません。諦めてはだめだということはわかっているのですが。

 ところで、ピート・シーガーは、フーガのようなこの歌詞のヒントを、ロシアのノーベル賞作家ミハイル・アレクサンドロヴィチ・ショーロホフ(Михаил Александрович Шолохов、1905年5月24日〈当時のユリウス暦では11日〉~1984年2月21日)の作品『静かなドン』から得たようです。

 『静かなドン』は、第一次世界大戦とそれに続くロシア革命の大動乱時代に、運命に翻弄されるドン・コサックを描いた大河小説ですが、その初めのほうに次のような箇所があります。

 主人公のグリゴーリーが夜遊びから帰ってくると、兄嫁のダーリヤがぐずる赤ん坊を寝かしつけるために、コサックの古い歌を歌います。間に挟まっている文章を除いて歌詞だけを書き出すと、次のようになります。

ねんねんよ、おころりよ
おまえはどこへいきました?
お馬の番に行きました
どんなおうまの番をしに?
金でかざった鞍おいた
お馬の番にゆきました……

おまえのお馬はどこへ行(い)た?
ご門の外に立ってます
それじゃあご門はどこへ行た?
水が流してゆきました

それじゃあがちょうはどこへ行た?
あしのしげみに逃げて行た
それじゃああしはどこへ行た?
むすめが刈ってゆきました

それじゃあむすめはどこへ行た?
むすめは嫁にゆきました
それじゃあコサックはどこへ行た?
戦さにでかけていきました……
(横田瑞穂訳 河出書房 昭和42年〈1967〉初版)

 『花はどこへ行った』が世界に広まるきっかけとなったのは、キングストン・トリオが1961年にリリースしたレコードです。その後、ピーター・ポール&マリー、ブラザース・フォア、マレーネ・ディートリヒ、ジョーン・バエズなど名だたる歌手・グループが次々とカバーして反戦ソングの定番となりました。

 日本では、昭和39年(1964)から、デュークエイセス、園まり、中原美紗緒、牧秀夫とロス・フラミンゴス、梓みちよ、ザ・ピーナッツなどがレコードを発売しています。
 その後も、
倍賞千恵子、加藤登紀子、フォーク・クルセダーズ、ザ・リガニーズなど数多くの歌手・グループがカバーしていますが、そのほとんどがおおたたかしの日本語詞、もしくはその一部を変えた歌詞で歌っています。

(二木紘三)


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