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作詞・作曲:Benjamin L.P. Godard、日本語詞:近藤朔風
1 むごきさだめ 身に天降(あも)りて 2 愛のつばさに おおわれつ Berceuse de Jocelyn Couchés dans cet asile Nous reposons tous deux Oh ! Ne t'éveille pas encore Sous l'aile du Seigneur Nous avons vu les jours |
《蛇足》 フランスの作曲家、バンジャマン・ルイ・ポール・ゴダール(Benjamin Louis Paul Godard 1849–1895)のオペラ『ジョスラン(Jocelyn)』)で歌われるアリアの1つ。
『ジョスラン』は、1888年にパリで初演されましたが、現代ではほとんど上演されず、『ジョスラン子守歌(Berceuse de Jocelyn)』だけが歌われたり、演奏されたりします。
『ジョスラン』の舞台は革命期のフランス。フランス革命では、アンシャン・レジーム(旧体制)の時代に特権を享受していた聖職者や貴族たちが激しく弾圧されました。
さらに、啓蒙主義の「理性による思考」が過剰に重視され、それに反すると目された文物は排斥されました。カトリックの典礼やしきたりは非理性的な習俗とされ、フランス全土でミサは禁止、教会や僧院は閉鎖、略奪、破壊の憂き目に遭いました。多くの聖職者が殺され、あるいは追放されました。
有名なモンサン・ミッシェルの修道院は監獄に変わり、修道院に戻ったのは1865年のことです。
そうした社会情勢のなかで、聖職についていたジョスランは山岳地帯に逃れ、数奇な運命をたどります。資料が見つからなかったので、正確な筋書きはわかりません。
上の日本語詞で「むごきさだめ」「のろわれの夜」「うれい」など、子守歌にはふさわしくない言葉が出てくるのは、ジョスランの悲惨な運命を反映したものなのでしょう。
メロディは流麗で、「癒やしの音楽」といったアルバムによく収録されます。
(二木紘三)